『イコライザー』感想 マッコールが見る世界が滲んでいるのは雨のせいか涙のせいか
デンゼル・ワシントン製作・主演の映画『イコライザー』には雨や水がいたるところに現れてました。
マッコールが娼婦のテリーと深夜のダイナーで会うとき
その二人が歩く夜のシーンで
ラルフィの母が経営する店に行くとき
汚職警官を粛清したあとのバスの車窓に
マッコールがダイナーで襲われるとき
ホームセンターで強盗が女性の指輪を奪ったあとの犯人の乗る車のタイヤがあげる水しぶき
娼婦たちの元締めに交渉するためマッコールがレストランに向かうとき
ニコライがテリーの友人マンディを絞殺する時にテーブルに置かれた揺れるグラスの中
などなど。
いたるところに雨や水が現れます。
昔は、夜のシーンの撮影だと暗すぎて道路が映らなかったそうです。今と違ってフィルムもそれほど感度が良くなかったんです。それで夜のシーンはいつも水で路面を濡らしてキラキラさせてたそうですが、今はカラーだしビデオだし感度良好!暗いところも平気だよ! 水を撒くスタッフいらなくなって作業が楽だね! って感じですから、あえて夜の道路を濡らしているということは意味があるということです。
舞台となっているボストンの降水量を調べたところ年間を通して月平均100mm。東京の月別平均降水量は、梅雨から台風時の6月から10月が 150から250mm、乾燥注意報が出される12月から2月が60mmくらい。ボストンは雨がやたらと降っている地域ではないです。こんなに劇中で雨を降らせるのはどんな意味が?
「悲しい出来事が起こるところで雨を連想させるショットが現れる」
そんな気がします。
マッコールには、常に水がまとわりついています。
洗面所で手を入念に洗うシーンがあり、
蛇口の水を流しながら腕の傷を治し、
その蛇口から出る水の音を囮にテディたちを手玉に取り、
「雨乞いをするなら泥濘も覚悟しろ」と宣戦布告する。
映画の中の最大の敵、ニコライが登場する時も雨が降っていますね。敵が強くなると雨の描写も強くなるのでしょうか。
マッコールがニコライを倒す時にはスプリンクラーから噴出する水を雨に見立ててるように見えます。
それでいうと最後のプーシキンには、ニコライほどの雨は与えられません。シャワーは止められず雨に似た音は続いていますが、彼は洗面台の水を使ったトラップで感電死です。
悲しい出来事が起こるところで雨を連想させるショットが現れる。
マッコールが泣いているんだ! 心の描写だ!
でいいのかな? 少し陳腐な感じがしますが。