映画『いまを生きる』感想　心がざわざわしたシーン

映画「いまを生きる」の名場面は？　と聞かれれば、ラストの教室での "Oh Captain, My Captain" が一番に挙げられますが、私が一番印象に残ったのは、俳優志望のニールの両親の寝室のシーンです。父親が俳優への道に進むことを許さず医者にさせるため士官養成学校へ転校するように言いつけてニールを絶望に追い込んだ後のところ。心がざわざわしました。
なぜか。
この映画の編集はあまり奇をてらったアングルを使わず、ショットのつなぎもオーソドックスなものです。２回くらいカメラが３６０度グルグル回るシーンがありますが、それくらいで、安定した画面構成や落ち着いたテンポで物語に集中できるように作られています。
脚本に自信があるからできるのでしょう。脚本が面白くない、監督が自信を持ってないと奇をてらいたくなるものです。

しかし、くだんの寝室のシーンはちょっと変わっています。
今までの流れなら、
・寝ようとしているニールの父と母
・心配そうな母
・その母に「大丈夫だ、心配ない」と声をかけ、『これで良かったんだ』と自分に言い聞かせてるような表情の父
となるでしょう。
ところが実際はベッドの上の二人は放っておかれ、二人が寝ようとするのを映したら、カメラは父が脱いだスリッパに寄っていきます。ただのスリッパのクロースアップ。
ここでニールが取り返しのつかない選択をしてしまうことが分かって、心がざわざわしたのです。

ただ、果たしてこのシーンは私が汲み取ったような意図で演出されたものなのでしょうか？　そこが分からない。
アメリカ人も命を絶とうとする人たちは靴脱ぐの？
私が日本人だから、そう感じただけ？

近くにこういうことを聞けるアメリカ人の知り合いがいないので、なんか中途半端な気持ちです。
違う価値観を知りたいと生徒たちをマネて机の上に立ってみたものの、周囲には誰もいない。教えてくれない。
"Oh Captain, My Captain"